水戸地方裁判所下妻支部 平成8年(わ)457号 決定 1997年10月28日
主文
鑑定書(甲三号証)の取調請求を却下する。
理由
一 公訴事実
本件の公訴事実は、次のとおりである。
被告人は、法定の除外事由がないのに、平成八年一二月一〇日から遡ること一〇日位の間に、茨城県内又はその周辺において、覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン若干量を身体に摂取し、もって、覚せい剤を使用したものである。
二 争点
検察官は、被告人から採取した尿を資料とし覚せい剤を含有するか否かを鑑定事項とする鑑定の結果を記した鑑定書(甲三号証。以下「本件鑑定書」という)を覚せい剤の使用を裏付ける証拠として取調請求をした。これに対し、弁護人は、警察官による前記採尿の過程に重大な違法があり、その結果として採取された尿を資料とする本件鑑定書は違法収集証拠であるから証拠能力を欠くと主張した。ここでの争点は、本件鑑定書の証拠能力の存否にある。
三 採尿に至る経緯
捜査の端緒から被告人が茨城県水海道警察署へ連行されるまでについて、証人今泉清美、同斉藤広一、同沼尻栄及び被告人(第五回公判)の当公判廷における各供述、被告人の検察官に対する供述調書によれば、次の事実を認めることができる。
被告人は、平成八年一二月一〇日の午後、茨城県筑波郡谷和原村所在のパチンコ店「甲野」内において、パチンコの出玉の数のことで店員と口論となった。同店の者から、同日午後三時五〇分ころ、水海道警察署の刑事課へ電話があり、これに応じて、同日午後四時ころ、パトカーと捜査用車両に分乗した警察官五名が同店に到着した。警察官らは、その場にいた関係者から事情聴取をし、うち二名が被告人からさらに事情を聴くことになり、その場からやや離れた所に駐車してあった捜査用車両に被告人を案内し、うち一人の警察官が、これは恐喝未遂事件かと思いつつ事情聴取を始めた。その途中で、被告人は、覚せい剤の事件で六年くらい刑務所に入っていて出て来て間もないと述べるし、その様子は落ち着きがない。顔につやがない、唇が乾いている等の覚せい剤を使用している者の徴候を示していたため、同警察官は、被告人が今も覚せい剤を使用しているのではないかとの嫌疑を抱き、「小便を置いていけ」と言ったところ、被告人は、その場で進んで尿を出す旨述べた。しかし、その場には尿の提出を受ける容器がない等の不都合から、同警察官は、水海道警察署への任意同行を求めたところ、被告人がこれに同意したため、被告人を乗せた同車両は同警察署へ向かい、同日午後四時三〇分ころ到着した。被告人は、前記車両の中で、同乗の警察官に対し、「小便を出したら帰してくれるんだろうな」と何度も念を押すように質問を重ねたのに対し、同警察官がこれを否定しないことから、尿を提出すれば帰してもらえるものと思い込み、険悪な雰囲気になることはなかった。被告人は、同警察署に到着してすぐ二階の取調室へ通され、刑事課の事情聴取を受けた。被告人は、そこでも「小便を出したら帰してくれるんだろうな」と繰り返した。取調べの警察官らは、先のパチンコ店での口論は、刑事事件とはならない程度のものと考えていた。刑事課の事情聴取は一〇分間ほどで終了した。
以上認定の事実を前提にして、さらに、これに引き続き採尿に至るまでの経緯について、証人若松和年、同田鎖麻衣子及び被告人(第五回、七回及び八回の各公判)の当公判廷における各供述、被告人の検察官に対する供述調書によれば、次の事実を認めることができる。
水海道警察署で覚せい剤事犯の捜査を担当する生活安全課の若松和年課長(以下「若松課長」という)は、ほか二名の警察官とともに、平成八年一二月一〇日午後四時四〇分ころ、被告人のいる前記取調室へ赴き、刑事課から捜査の引継ぎを受け、さっそく、被告人に尿を採取する旨告げると、被告人は、自ら進んで二階の男子便所へ行った。そこで採尿用の容器を渡された被告人は、排尿寸前の状態で、同課長に対し、「これを出したら帰してくれるんですよね」と尋ねたところ、同課長から「帰すわけねえだろう」と言われたので、「話が違うじゃないか」と言って尿の提出を拒否し、そのまま便器へ放尿した。被告人は、「取調室へ入るのはいやだ。もう帰してくれ」と言ったが、同課長に「脅迫で逮捕だよ」と言われつつ先の取調室へ連れ戻された。同課長が「これから覚せい剤のことで取調べをする」旨告げると、被告人は「自分は覚せい剤関係ないでしょう。弁護士が来なければ、尿を出さない」と言った。これを受けて、同課長は、被告人の襟首をつかんで「何この野郎がたがた言ってるんだチンピラ」と言いつつ襟首を前後に揺すり、足蹴りにした後、取調室から出て行った。その後、取調室内は、入口から見て机を隔てた奥の椅子に被告人が座り、その机の向かいに一人、入口にもう一人の各警察官が座る配置であった。同課長は、被告人の採尿拒否の態度を見て強制採尿の手続を採ることを決意し、同日午後六時頃には、その手続に必要な令状請求のため係員が土浦簡裁へ出発した。午後七時ころ、被告人は、便意を訴え、取調室にいた警察官に懇願してようやく二階の男子便所へ行ったが、そこに現われた同課長から取調室へ戻るよう説得され、大便を排泄することなく取調室へ連れ戻された。その後被告人は、大便を我慢し続けた。同日八時五〇分ころ前記令状が同警察署に到着したので、同課長は同令状を被告人に示して尿を提出するよう説得したところ、被告人は、同日午後八時五二分ころ、しぶしぶこれに応じ、尿を提出した。
ところで、若松課長は、当公判廷において、要旨の部分において右認定と大きく異なる次のとおりの供述をしている。
①若松課長は、同日午後四時四〇分ころ、被告人に尿を提出するように言ったが、被告人にこれを拒絶され、その後三〇分から四〇分間説得したが、被告人の拒絶は一貫していた。②同日午後七時ころに至り、被告人が尿意を訴えたので、同課長は採尿用の容器に出してもらいたい旨告げたところ、被告人がこれを拒絶したので、被告人を便所まで案内して排尿してもらった。③被告人が便意を訴えたのは、②の少し後である。④被告人の便意の訴えは嘘だと思った。
しかしながら、①の供述は、それ以前の経緯と矛盾し、採用することはできない。すなわち、先に認定したとおり、被告人は水海道警察署へ到着する前後を通じて「尿を出せば帰してくれるんだろうな」と警察官に尋ね尿を提出すれば帰してもらえるものと思い込んでおり、この状況は、若松課長が刑事課から捜査の引継ぎを受けた時点まで続いていた。このままで行けば、被告人は早く帰宅したいために進んで尿を提出するのが自然である。それなのに、①によれば、右引継ぎ直後に尿の提出を求められた被告人はこれを拒絶したことになるが、これでは被告人が態度を翻した理由が説明できず、不自然である。これに対し、被告人が当公判廷において供述するところは、「若松課長の求めに応じて、自ら進んで便所に行き採尿しようとして同課長に『これを出したら帰してくれるんですよね』と尋ねたら、同課長が『帰すわけねえだろう』と答えたので、採尿を拒否し、以後一貫して採尿を拒否し続けた」というものであって、それ以前のむしろ進んで採尿に応じようとする被告人の心理によく整合するばかりか、尿を提出すれば帰してもらえるという思い込みを頭から否定された被告人が、これを警察の裏切りととらえて反発の心理を強め、以後頑な採尿拒否の動機になったものと合理的に説明することができる。また、被告人のこの供述は、本件事件当日より一五日後に作成された被告人の検察官に対する供述調書の内容に合致し、被告人の供述としては一貫しているため、当公判廷における単なる思い付きとは考えられず、この点は、被告人の前記供述に信用性を付加する一要素ということができる。そこで、①の供述を採用せず、これに対応する被告人の当公判廷における供述を採用するのが相当である。
また、若松課長による被告人への前記暴行について、同課長の当公判廷における供述では話の流れが異なりこれに対応するかと思われる事実は登場しないが、その全趣旨から前記暴行の事実を否定するものと解されるところ、証人田鎖麻衣子の当公判廷における供述によれば、被告人は、尿を提出した翌日に田鎖弁護士に接見した際に前記暴行の大略を述べたことが認められ、加えて、被告人は、検察官に対する供述調書の中でも同旨を述べており、その経緯をさらに詳しく述べた当公判廷における供述に至るまで一貫している。そのうえ、暴行の存否が問題になっている時刻の直前に被告人が突然前言を翻し弁護士と絡めて採尿を拒否したことからすれば、若松課長が被告人のこれらの言動により気分を害したと考えることができ、暴行に及ぶ動機を理解することができる。また、この暴行を含む時間帯に関する同課長の前記一連の供述を採用することができないことは、先に述べたとおりである。これらを総合して、前記暴行の事実を認定した。
②についてみると、第一に、①を前提とすれば、被告人は、パチンコ店にいた午後三時五〇分から午後七時ころまでの間、一度も排尿していないことになり、午後七時ころに至って尿意を催すのは時間的に自然であるところ、先に説示したとおり①は採用せず、午後四時四〇分すぎころに被告人は排尿していることが認められ、右の事情は減殺される。第二に、若松課長の被告人を応接する態度全般をみると、午後四時四〇分ころから暴行に及ぶまでの間は、先に認定したとおり、高圧的態度で一貫しており、午後七時ころの被告人の大便の訴えに対してはこれを許さない姿勢を貫き通しており、午後八時五二分ころ尿の提出を終えた後については、被告人の当公判廷(第五回)における供述によれば、大略、「さんざん手こずらせやがって、この野郎」と被告人を罵倒し、被告人が大便を果たそうとしたのを再び禁じたり、被告人の腕の身体検査をするにあたり相当強度な暴力を用いていることが認められ、同課長の右一連の態度は、乱暴な言葉遣いのうえ高圧的傾向に終始しており、被告人の希望を叶えてやろうという心遣いをうかがうことはできない。このような流れの中で時間的にほぼ半ばに位置する②は、被告人の採尿拒否を受けた若松課長が、立腹するでもなく、それどころか、被告人を便所まで案内したうえ被告人に自由に排尿させたという被告人の希望を進んで叶えるという慈悲の心溢れる内容であって、この前後の同課長の言動と整合せず、不自然である。第三に、午後四時四〇分から三〇分か四〇分間の経緯は、取調べの警察官による被告人の身柄の拘束の有無について判断するのに重要な意義を有するところ、先に述べたとおり、この点についての若松課長の供述である①が虚偽であり、その供述の信用性全体に大なる疑問が残ることを総合すると、②の供述もまたそれ自体真に受けて良いか否かが大きな疑問となる。これらの事情に加えて、被告人が当公判廷(第八回)において、②は虚偽である旨明確に述べていることに照らせば、②を認めることはできない。
③の前提である②を認めることができない以上、③も認めることはできない。
若松課長は、④の理由として、前記②及び③の事実を前提にして、もし被告人の便意が真実であれば、少し前に排尿のために便所に行った際についでに大便も排泄したはずであるのにしなかったからと説明しているが、元来、事柄の性質上、便意が嘘かどうかは本人以外の者には明確でないうえに、本件では嘘と決め付けるに足りる特段の事情はない(前記②の事実を認めることができないことは、先に説示したとおりである)。かえって、被告人の当公判廷における供述(第五回公判)によれば、被告人は、午後七時前に取調室で気分が悪くなり床に座り込み次第に体調を崩し便意を催すに至ったこと、被告人は、午後八時五二分ころ便所で尿を提出した直後に再び大便を排泄しようとしてまたまた若松課長によりこれを禁じられて取調室へ連れ戻されたこと、被告人は、覚せい剤取締法違反の嫌疑により緊急逮捕されて留置場へ入れられた後の午後一〇時ころに至りようやく大便を排泄することができたことを認めることができ、これら一連の被告人の言動は、被告人の便意の訴えを裏付けるものというを妨げない。それに、被告人の便意の訴えがもし嘘であるとすると、被告人は取調べの警察官に対し自己の便意を納得させるため右一連の自作自演の独り芝居をし続けたことになるが、被告人がわざわざこのような手が込んだ小細工を弄する理由は何もない。以上の検討から、被告人の便意を認めることができる。
四 本件鑑定書の証拠能力
1 採尿過程における捜査の違法性
元来、被告人にしてみれば、パチンコ店でパチンコを楽しんでいたところ、店とのいざこざの処理の過程でなされた警察官の要求に応じて尿を提出し早く帰りたかったからこそ進んで警察署へ同行したものであって、尿を提出しても帰してもらえないと知って尿の提出を拒否した以上、さらに警察署に居続ける理由は何もない。しかも、時刻は官庁の通常の執務時間が過ぎ冬の夜が深まっていくのであるから、帰りたいと思うその心情は自然である。実際、被告人は、採尿拒否の態度を初めて表明した直後に明確な帰宅の要求をしたところ、若松課長に拒絶されて取調室へ連れ戻されている。この時点から後に被告人が取調室に居ることはもはや自由な意思に基づくものとは言い難い。同課長が被告人を取調室へ連れ戻す際に口にした「脅迫で逮捕だよ」という言葉は、これに至る経緯からすれば虚言というほかはないが、それでも被告人に対し取調室に居るよう心理的に仕向ける効果は認められる。加えて、その直後の同課長の被告人に対する暴行は、被告人の退去を直接制約する態様及び程度ではなかったものの、取調べの警察官に逆らえば以後同様の仕打ちを受けるとの暗黙の心理的圧力となりうるものである。これに引き続いて被告人を監視する態勢は、先に認定したとおり、取調室の奥に被告人が居てその机を挾んで一人の警察官が、入口の近くにもう一人の警察官が常時配置され、物理的にも被告人の任意の退去は困難であった。以上の事情を総合すると、被告人が取調室に居続けたことは、自らの任意によるものではなく、警察官の一定の制約による結果というほかはない。
この間の被告人の自由が現実にどの程度制約された状態にあったかは、被告人がこの状態を脱しようと試みたときに取調べの警察官からいかなる妨害を受けるかにより具体的に評価することができるところ、被告人が大便をするため便所へ向かったにもかかわらず途中で若松課長の説得により取調室へ連れ戻されて大便の排泄を果たすことができなかった点に着目する必要がある。一般に、人の排泄作用まで他人の意のままにある状態とは、すなわち、その人が身柄を拘束された状態というべきである。すると、遅くとも、被告人が大便の排泄を禁じられて取調室へ連れ戻された時以降尿を提出するまでの間、被告人は取調べの警察官に身柄を拘束されていたと評するほかはない。
検察官は、同日午後七時ころ、被告人は、尿意を訴えた際、若松課長の採尿の求めを拒絶して自ら便所へ行って自然排尿したという同課長の供述を前提にして、被告人は拘束状態にはなかった旨主張するが、同課長の同供述を採用することができないことは先に述べたとおりであるから、検察官のこの主張は失当である。
若松課長の前記一連の言動は、強制採尿のための令状が到着するまで被告人の身柄を警察署に確保することが必要であると考えてのことと見受けられるけれども、本件に限っては、強制採尿の手続も被告人の身柄を警察署に留め置くこともともにその必要性は存しなかった。何とならば、被告人は、同課長の取調べの初めに、尿を提出したら帰してもらえるものと思い込んで「これを出したら帰してくれるんですよね」と尋ねつつ自ら進んで尿を提出しようとしたのであるから、同課長としては、「そのとおり」と一言述べて被告人から尿の任意提出を受けたうえで、人定事項、特に住居の点を確認して直ちに被告人を帰宅させ、後日、この尿を鑑定嘱託して得た同尿中に覚せい剤を含有する旨の鑑定書を疎明資料として逮捕状の発付を得、これを執行して被告人を通常逮捕すれば足りるからである。
被告人の受けた必要性を欠く前記身柄の拘束は、逮捕状その他これを正当化するに足る法的根拠を有せず、違法と評価せざるをえない。
2 違法の所在と本件鑑定書との関連性
先に認定した警察官による被告人の身柄の違法な拘束は、この拘束の間に被告人から尿を採取し、その尿の中に覚せい剤が含まれるか否かについて鑑定嘱託し、これに応じた鑑定書により、最終的に被告人の覚せい剤の使用の事実を立証することを目的とする。ゆえに、前記違法な身柄の拘束は、被告人の覚せい剤の使用を立証するためという同一の目的の下になされた一連の手続の中のひとこまであって、しかも、身柄の拘束、採尿、鑑定嘱託、鑑定、本件鑑定書の順に、前者がなければ後者がありえないという密接な関係を有している。このような場合には、身柄の拘束の前記違法は、実質的に本件鑑定書にも引き継がれると解するのが相当である。
なお、被告人は、最終的には若松課長の求めに応じてしぶしぶながら自ら尿を提出しているが、前記のとおり大便の排泄を訴えながらそれすらままならないような過酷な身体の拘束の下に少なくとも二時間弱置かれた末に令状を示されてのことであるから、この尿の提出は被告人の任意によるものとは言い難い。
3 違法の重大性
大便の排泄は、人の生理現象であってその随意のままになしうるものではなく、たとえ逮捕状に基いて逮捕された者や懲役囚等の適法に身柄の拘束を受けている者であっても、その排泄の自由まで奪うことは許されない。ところが、被告人が受けた前記違法な身柄の拘束とは、単に退去の自由が制約されたというにとどまらず、まさにこの排泄の自由まで奪う過酷なものであった。被告人がこのような状態にあった二時間弱の間に便意を我慢し続けたことにより被った肉体的及び精神的苦痛を思うべきである。これらの点を正当に評価すれば、被告人の前記違法な身柄の拘束に見るその違法の程度は、単に逮捕状がないのに実質的な逮捕状態に置かれたという程度の違法をはるかに越え、令状主義の精神を没却する程度に立ち至っていたといわなければならない。
4 将来の捜査への影響
若松課長の当公判廷における供述の中には、任意に警察署に居る者からの大便を排泄したいとの希望に対し取調べの警察官が説得してこれを諦めさせること自体に何の疑問も抱かない思考を看取することができる。しかしながら、大便の排泄が説得の対象となりうるという思考自体が社会的に非常識である。警察官の抱くこのような思考が、本件身柄の扱いにおける重大な違法の温床となったことは間違いなく、今後の捜査一般の中で同様の身柄の扱いを繰り返すことのないよう警鐘を鳴らす必要性は大きい。
5 まとめ
以上検討したところを総合すれば、捜査上の重大な違法を伴う被告人の身柄の拘束により捜査官に直接もたらされた本件鑑定書は、将来の捜査における同様の違法を禁圧すべき要請に鑑み、最高裁判所第一小法廷昭和五三年九月七日判決刑集三二巻六号一六七二頁が示した違法収集証拠排除の法理により、証拠能力を欠くと評すべきである。
五 結論
よって、本件鑑定書は、証拠能力を欠くので、主文のとおり決定する。
(裁判官 井上薫)